電子楽器ウダーの存在を知ったのは昨年の秋でした。さっそく、ウダー公式ホームページをたよりに、寺での演奏をお願いして快諾を得たのは、晩秋になってから。そして、年が明けて節分が過ぎた二月初旬、わざわざ下見にきてくれました。
約束した時間の数十分前に山門に和服を着た若い男の人が立っています。宇田道信さんです。本堂にお通しすると、手にした小粋な風呂敷に包まれた桐箱を取り出しました。自家製スピーカーです。
着流しに羽織りをまとった姿に風呂敷と桐箱。そしてカメラの望遠レンズのような直径10センチで長さ20センチほどの物体から発する繊細な電子音。それを操作するのは、坊主頭の年齢不詳の青年。桐箱は御徒町の「箱義」の特注品だという。電子楽器と和服と東京・下町の老舗の技。和服の由来を尋ねると、「去年の暮れからふと着たくなったので、買いそろえた」とのこと。奇妙な取り合わせです。
電子楽器と聞くと、人工的なものを想像するけれど、製作者・宇田道信氏の生き方と人間性そのものがウダーでした。